こんにちは、超個別指導塾まつがく 上里教室の松尾です。
今回で3回目となる、令和3年度埼玉県公立高校入試の全問考察。
来年以降の高校入試に備えることを目的としています。
高校受験を戦い抜く上で何に注意して勉強を進めていけばいいのか、一つの目安にしていただければ幸いです。
【数学】(学校選択問題)
今回は数学の「学校選択問題」です。
平成29年度より「学校選択問題」が採用できるようになり、いくつかの変遷があった教科です。
今年度、学校選択問題を採用した高校は浦和・浦和第一女子・浦和西・大宮・春日部・川口北・川越・川越女子・川越南・熊谷・熊谷女子・熊谷西・越ケ谷・越谷北・所沢・所沢北・不動岡・和光国際・蕨・市立浦和・川口市立の21校でした。
いずれも県内屈指の進学校ばかりですね。
上位の高校の受験者に差をつける問題が多く、難易度も高くなっています。
大問別分析
昨年と同じく大問5つの構成で実施されました。
1.小問集合
2.図形(作図・グラフ内の三角形の回転体の体積)
3.文字式を使った説明問題
4.図形の利用
5.図形上の動点問題
大問5つという構成は変わらず、配点もそれほど大きな変化はありませんでした。
大問1の設問数が1問増えた点が留意ポイントでしょうか。
大問別出題傾向
1.小問集合 配点:44点
設問数が1問増え、有効数字の問題が出題された点が変更点です。
難易度は昨年並という印象。
(1)「分数を含む文字式の加減」、(2)「式の値」、(3)「二次方程式」と、ここまでがいわゆる計算問題というところでしょうか。
(2)は毎年正答率が低くなる「式の値」の問題ですね。
与えられた式を因数分解することで計算がスムーズになるので、すぐに代入しないことがポイントです。
(4)は「二乗に比例する関数の変域」に関する問題でした。
定期テストでも良く出題される問題ですので、基本がしっかりと身に付いていれば問題ありませんね。
(5)は「有効数字」に関する出題でした。
これまで入試では出題されていなかったため戸惑った受験生もいたことでしょう。
出題範囲の縮小によって取り上げられた問題なのか、これからも継続して出題されるのか、来年以降も注意してみていくことが必要です。
(6)は「度数分布表」の問題です。
「中央値が含まれる階級の相対度数を求めなさい」という設問ですが、階級値や度数を答えてしまった受験生もいたのではないでしょうか。
問題自体は平易ですが、緊張の中で読み間違えてしまうことのないようにしたいものです。
中央値が含まれるのは『6時間以上8時間未満の階級』ですので『度数は14』ですね。
問われているのは『相対度数』ですから【14÷40=0.35】となります。
(7)は「立体の展開図」の問題でした。
ねじれの位置となる辺を見つける問題ですが、立方体を作図し頂点の記号を入れていけばさほど難しい問題ではありません。
(8)は「連立方程式の文章問題」ですね。
割合を使った人数の増減の問題は受験生必修ですので、できた生徒は多かったのではないでしょうか。
文字を昨年の生徒数にすることが多いので、答えを書く際にそのまま答えてしまわないように注意しましょう。
(9)は「確率」の問題でした。
樹形図を書くことで確実に正解することのできる問題ですが、試験時間を考えてもそうですし、高校へ行ってからの学習準備、という点でも、確率は高校での学習内容を予習しておくことをオススメします。
「取り出した玉を袋に戻す」ということから、「2回とも赤が出る確率」は【3/5×3/5=9/25】となります。
同様に「2回とも白が出る確率」は【2/5×2/5=4/25】ですね。
よって「2回とも同じ色が出る確率は【9/25+4/25=13/25】となります。
樹形図を書くよりも時間短縮ができますので、高校数学の学習をやっておきましょう。
(10)は「円周と接線の長さ」に関する問題でした。
答えに辿り着くまでの考え方を書かなければなりませんでしたが、図を使って説明ができると良い問題でしたね。
『円の接線は接点を通る半径と垂直に交わる』という性質をうまく使うことで紐の長さの違いを説明します。
完答できないまでも部分点は欲しいところです。
大問1が1問増え、配点も2点増えました。
(10)以外はいずれも基本的な問題なので、ここは全問正解が必須になります。
(10)も解答用紙の図を活用できれば答えられない問題ではありませんので、44点中40点は取っておきたいところです。
2.図形(作図・グラフ内の三角形の回転体の体積) 配点:11点
関数の問題がここで出てきたことは小さな驚きでした。
大問3や4、5で出題されるような問題でしたので、面食らった受験生も少なくないのではないでしょうか。
(1)は作図の問題ですが、例年通り間接的な指示による作図でした。
『2直線から等しい距離にある点』=『角の二等分線』、『2点から等しい距離にある点』=『垂直二等分線』の複合問題ですね。
直線mが図示されていなければ難しい問題だったかもしれませんが、作図ではよく出題される言い回しですので、しっかりと正解できた受験生も多かったものと思います。
(2)は「グラフ内の三角形の回転体の体積」を求める問題でした。
『曲線上の点A・Bの座標』を求め『直線ℓの直線の式』をまず求めなければなりません。
その上で『x軸との交点Cの座標』を求め、得られた三角形を回転させてできる立体の体積を求めます。
基本的な考え方の組み合わせですので解けない問題ではありませんが、苦手とする生徒も多いです。
この問題が大問2で出るということは、大問3や4はどうなるんだろう、と考えさせられる問題であったかもしれません。
昨年度の入試考察【数学:埼玉県公立高校入試出題傾向:学校選択問題編【埼玉県受験情報2021】】でも述べましたが、この大問2はしばらく色々な出題がなされるかもしれませんね。
出題形式がまだ定まっていない印象を受けますので、決め撃ちせずに様々な問題に対応していく必要がありそうです。
3.文字式を使った説明問題 配点:12点
昨年度は図形の利用でしたが、今年は「文字式を使った説明問題」となりました。
これまでは大問1の最後の問題として出題されることが多かった問題が、大問として扱われました。
(1)は「下線部の予想が正しいことを証明する問題」でした。
文字式の証明問題は難しく感じる生徒が多い問題ですが、『数字を文字で表すこと』と『指示された内容を計算式で表すこと』の2つができれば必要以上に恐れる心配はありません。
「nを0以上の整数とすると、」に続けて書くという指定があるので【4で割ると1余る自然数は4n+1となる】が出てくれば、あとはしっかりと解く事ができるでしょう。
(2)では「他の予想が正しいときに空欄に当てはまる自然数を答える問題」でした。
まず【Bさんの予想】ですが、(1)と同様に考えてみるのが良いでしょう。
【ア】に入る数をa、【イ】に入る数をbとおくと、xに代入する数は「an+b」と表せますね。
これを3x+5に代入すると「3(an+b)+5=3an+3b+5」となります。
これが7の倍数となれば良いので、「3an」と「3b+5」に分け、それぞれが7の倍数となるための「a,b」の値を考えます。
まず「3an」の方は、これが7の倍数となるには、3aが7の倍数である必要があります。
つまり、aは7の倍数という事が分かりますね。
a,bは1けたの自然数ですから、a=7、つまり、【ア:7】となります。
同様に、3b+5も7の倍数となるには「3b+5の値が7,14,21,28,35…」となるときのbの値を考えましょう。
Bは自然数ですので「3b+5の値は、14,35,56…」となります。
このうち「bが1けたの自然数」となるのは「14」のときだけですね。
よって「3b+5=14→b=3」、つまり【イ:3】となります。
「Cさんの予想」はこれよりも分かりやすかったかもしれません。
「3x+5=3(x+1)+2」とすることで前半部分が正しい事がわかり、同様に「(3x+5)²=9x²+30x+25=3(3x²+10x+8)+1」とできるので、3で割ると余りが「1」となります。
よって【ウ:1】ですね。
大問3での出題としてはこれまでにない形式でしたが、問題自体はこれまでの入試問題でもよくみられたものでした。
いろいろな過去問をしっかり解くなどの対策ができていれば問題なかったのではないでしょうか。
4.図形の利用 配点:16点
大問4は「図形の利用」となりました。
(1)は「線分BEの長さ」を求める問題です。
これを解くには「三角形ABCと三角形ACDが相似」であることと「相似比が3:2」であることを見つけなければなりません。
それを使って「辺CB:辺CD=3:2」ということが分かりますね。
さらに、三角形CBEにおいて、「角の二等分線と線分の比の性質」により、『CB:CD=BE:DE』ということに気付けるか、が問われました。
中学3年生の「平行線と線分の比」の単元で扱われている内容ですが、まだ覚えきれていない受験生が多かったかもしれません。
(2)は「三角形ADHと三角形ACFが相似であることを証明する問題」でした。
相似の証明問題は概ね『2組の角がそれぞれ等しい』という相似条件を使いますので、それを前提に考えていきましょう。
仮定より【角DAH=角CAF】…①は分かります。
残り1組の角が等しいことがわかれば良いのですが【角ABC=角ACD】…②が使えますね。
三角形の外角の性質から、三角形DBCにおいて【角ADC=角DBC(ABC)+角DCB】…③となります。
また【角ACF=角ACF+角DCB】…④です。
よって②③④より【角ADC(ADH)=角AFC】…⑤と言え、①⑤より【2組の角がそれぞれ等しい】ので、三角形ADHと三角形ACFは相似ですね。
(3)は(1)をさらに発展させた問題でした。
方針としては、三角形ABCの面積が18㎠と与えられているので、どんどんこれを小さくして最終的に三角形GFCの面積を求めます。
まずは(1)より辺BE=3㎝、辺ED=2㎝。
そして角BACの二等分線ですので「BF:CF=3:2」となります。
辺AEの長さが6㎝であることに着目し、三角形ACEが二等辺三角形であることに気づけるか、が重要です。
「二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を二等分する」ので、「CG:EG=1:1」、これも押さえておきます。
それでは、まず三角形ABCを線分CEで2つに分けます。
三角形ACEと三角形BCEは、それぞれAE、BEを底辺として考えると、高さの等しい三角形であることがわかります。
高さの等しい三角形の面積比は底辺の長さの比に等しくなるので『三角形ACE:三角形BCE=6:3=2:1』となりますね。
つまり三角形BCEの面積は三角形ABCの面積の1/3になりますので『三角形BCE=6㎠』であることがわかります。
次は、三角形BCEを線分EFで2つに分けると、三角形BEFと三角形CEFができます。
こちらも先ほどと同じように辺BF、CFを底辺と考えると高さが同じ三角形になるので『三角形BEF:三角形CEF=3:2』となります。
よって三角形CEFは三角形BCEの面積の2/5となるので『三角形CEF=12/5㎠』と出てきます。
さあもうひとがんばりです。
最後は三角形CEFを線分FGで2つに分けましょう。
同様に2つの三角形GFCと三角形GFEをCG、EGを底辺と考えると『三角形GFC:三角形GFE=1:1』となります。
求める三角形GFCの面積は三角形CEFの半分となるので『12/5÷2=6/5』、よって【6/5㎠】となります。
(3)は学校選択問題としてもなかなかの難問でしたね。
類題を何度も何度も解いていないと時間内に解き切ることは中々難しかったかもしれません。
5.図形上の動点問題 配点:17点
最終問題は「図形上の動点問題」でしたね。
出題範囲が減少した時点で関数の問題が増えることは予想されていましたので、動点問題の出題はある程度対策できていたのではないでしょうか。
(1)は「点Qが点Dに到着するまでのxとyの関係を式で表し、その時の変域を求める問題」でした。
点Qは毎秒1㎝で長さ4㎝のAD上を動くので【4秒後】に点Dに到着しますね。
よって求めるxの変域は【0≦x≦4】となります。
その間、点Pも同じ毎秒1㎝で長さ5㎝のAB上を動くので、4秒後には、Aから4㎝の地点にいます。
Yは三角形APQの面積なので『底辺(辺AP)×高さ(辺AQ)÷2』で求められ、【y=½x²】と表すことができます。
(2)は、「三角形APQと三角形AQCの面積比が3:1になるxの値をすべて求める問題」です。
少々難問ですね。
さまざまな解法があると思いますが、ここでは【グラフ】を使った考え方を紹介したいと思います。
動点問題では、「動点が頂点に達したときの面積をグラフに書き込む」ことで、グラフの作成が容易になります。
今回の問題だと【x=4、5、6、11】のときのyの値をグラフに書き込めると面積の変化がグラフでわかるようになります。
またグラフの形が変わったところを変域として考え、変域ごとの直線・放物線の式を表してみましょう。
図の赤のグラフは【三角形APQの面積】を、青のグラフは【三角形AQCの面積】をそれぞれ表しています。
このグラフから面積比が「3:1」になっている箇所を見つけます。
グラフ内の緑で表した辺りがおおよそ「3:1」になっていると見当をつけましょう。
変域でいうと【4≦x≦5】と【6≦x≦11】になります。
それぞれの変域で、【三角形APQの面積=三角形AQCの面積の3倍】となる【xの値】を求めれば良いので
【4≦x≦5のとき】
2x=3(-2x+12) この方程式を解いて、【x=9/2】となります。
【6≦x≦11のとき】
-2x+22=3(2x-12) この方程式を解いて、【x=29/4】となります。
(3)は「三角形APQの面積が台形ABCDの面積の半分になるときのxの値を、途中の説明も書いてすべて求める問題」でした。
【台形ABCDの面積=(2+5)×4÷2=14㎠】とわかるので【三角形APQ=7㎠】となるxの値を求めれば良いですね。
先程のグラフを使うと【y=7】となるのは
【0≦x≦4】と【6≦x≦11】の2箇所と分かります。よって、
【0≦x≦4のとき】
½x²=7 この方程式を解いて、【x=±√14】となります。Xは正の数なので【x=√14】です。
【6≦x≦11のとき】
-2x+22=7 この方程式を解いて、【x=15/2】となります。
(2)(3)は、なかなかの難問でしたが、グラフを上手に活用できると、解法への道を見つけることができますね。
全体的に『説明を必要とする問題』が増えてきていますので、ただ問題を解く、ただ計算をするのではなく『論理的に物事を考え、解法を見つける』という学習が必要になってきています。
多くの問題を解くことも必要ですが、1つ1つの問題について『なぜ、そのように考えるのか?』を常に意識して取り組めると良いでしょう。
意識の仕方一つで、同じ教科書の1問、ワークの1問でも差がついていくことでしょう。
以上、今回は令和3年度埼玉県公立高校入試【数学(学校選択問題)】の全問考察でした。
次回は、【社会】の考察をします。お楽しみに。
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