こんにちは、超個別指導塾まつがく 上里教室の松尾です。
前回の「国語」からはじまった全問考察ですが、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」ということで、令和3年度埼玉県公立高校入試の問題を考察し、来年以降の高校入試に備えることを目的としています。
高校受験を戦い抜く上で何に注意して勉強を進めていけばいいのか、一つの目安にしていただければ幸いです。
今回は数学です。
平成29年度より高校により「学力検査問題」「学校選択問題」を選択することができるようになり、ここでは「学力検査問題」について考察します。
数学全体の出題傾向
1 小問集合
2 図形(作図・グラフ内の三角形の面積)
3 文字式を使った説明問題
4 図形の利用
大問4つという構成は前年と変わらず、配点もそれほど大きな変化はありませんでした。
出題範囲の縮小に伴い増加すると考えられていた関数の問題が、逆に例年より少ないくらいだったのは予想外でした。
大問別出題傾向
1.小問集合 配点:65点
目新しい問題はありましたが、昨年と問題数・難易度とも変わりなかった、という印象です。
(1)「文字式の加減」、(2)「正負の四則計算」、(3)「文字式の乗除」、(4)「一次方程式」、(5)「平方根の計算」、(6)「因数分解」、(7)「連立方程式」、(8)「二次方程式」と続き、ここまでの配点が32点でした。
特別に難しい問題も含まれていませんので、ミスなくリズム良く乗り越えていけると良いでしょう。
(9)は「角度を求める問題」です。
「ヤジリ型」と言われる、入試ではよく出題される形ですので、練習していた受験生は多いのではないでしょうか。
『三角形2つに分けて考える』、もしくは『ヤジリ型は四角形として考える』のいずれかで解くことができます。
(10)は「二乗に比例する関数の変域」に関する問題でした。
定期テストでも良く出題される問題ですので、基本がしっかりと身に付いていれば問題ありません。
(11)は「球の表面積・体積」の問題です。
公式がしっかりと頭に入っているか?それだけが問われた問題とも言えますね。
(12)は「展開図」に関する問題です。
立方体の展開図ですので、イメージはしやすかったのではないでしょうか。
(13)は「有効数字」に関する出題でした。
有効数字についての理解がしっかりなされていないと難しいかも知れません。
これまで入試では出題されていなかったため戸惑った受験生もいたことでしょう。
出題範囲の縮小によって取り上げられた問題なのか、これからも継続して出題されるのか、来年以降も注意してみていきたいです。
(14)は「さいころの目の出方」に関する問題です。
ちょっと面白い出題のされ方ですね。
ア:6回投げるとき、1回は必ず6の目が出る
イ:3回投げて3回とも1の目が出たあと、もう一度投げるとき、1の目が出る確率は1/6より小さくなる
ウ:2回投げるとき、偶数の目と奇数の目が1回ずつ出る
エ:1回投げるとき、3以下の目が出る確率と4以上の目が出る確率は同じである
正解は【エ】です。
落ち着いて問題を読めば難しい問題ではありません。
(15)は「度数分布表」の問題です。
「中央値が含まれる階級の相対度数を求めなさい」という設問ですが、階級値や度数を答えてしまった受験生もいたのではないでしょうか。
問題自体は平易ですが、緊張の中で読み間違えてしまうことのないようにしたいものです。
中央値が含まれるのは『6時間以上8時間未満の階級』ですので『度数は14』ですね。
問われているのは『相対度数』ですから【14÷40=0.35】となります。
(16)は「円周と接線の長さ」に関する問題でした。
答えに辿り着くまでの考え方を書かなければなりませんでしたが、図を使って説明ができると良い問題でしたね。
『円の接線は接点を通る半径と垂直に交わる』という性質をうまく使うことで、紐の長さの違いを説明します。
完答できないまでも部分点は欲しいところです。
昨年から大問1の配点が増え、重要度が増しています。
どれだけミスなくリズム良く解けるかが非常に重要になっていますので、早い段階からしっかりと対策をしておくことをオススメします。
2.図形(作図・グラフ内の三角形の面積) 配点:10点
関数の問題がここで出てきたことは小さな驚きでした。
これまでは大問3や4で出題されるような問題でしたので、面食らった受験生も少なくないのではないでしょうか。
(1)は作図の問題ですが、再び間接的な指示に戻りましたね。
『2点から等しい距離にある点』=『垂直二等分線』ということは作図ではよく出題される言い回しですが、忘れている受験生も少なくなかったでしょう。
前年の正答率が高くなっていたことが出題方式を戻した理由かも知れません。
今年の正答率によって次年の出題形式も変わってくると思いますので、結果には注視したいところです。
(2)は「グラフ内の三角形の面積」を求める問題でした。
まず『曲線上の点A・Bの座標』、次に『直線ℓの式』を求めます。
その上で『x軸との交点Cの座標』を求めることで、はじめて三角形の面積が計算できます。
基本的な考え方の組み合わせですので、決して解けない問題ではありませんが、苦手とする生徒が多い問題ではあります。
この問題が大問2で出るのなら、大問3や4は一体どうなるんだろう、と考えさせられる問題であったかもしれません。
前年度の入試考察でも述べましたが、この大問2はしばらくいろいろな出題がなされるかもしれませんね。
出題形式がまだ定まっていない印象を受けますので、決め撃ちをせずに様々な問題に対応していく必要がありそうです。
3.文字式を使った説明問題 配点:10点
昨年度は図形の利用でしたが、本年度は「文字式を使った説明問題」となりました。
これまでは大問1の最後の問題として出題されることが多かった問題が、大問として扱われました。
(1)は先生とAさんの会話の空欄に当てはまる自然数を答える問題です。
【ア】は『4で割ると1余る自然数で1、5、9の次の数』を答える問題ですね。
4ずつ増えているだけですので答えは「13」となります。
コレはカンタン!
【イ】は『3x+5に【ア】の値を代入する』問題。
「3×13+5=44」と、こちらもカンタンな問題です。
(2)は『下線部の予想が正しいことを証明する』問題ですね。
『nを使って4で割ると1余る自然数』を「4n+1」と表せるかが最初の壁になったかもしれません。
『余りの出る割り算』を文字式で表すには『たしかめ算』を使います。
ということは、高校生になってからも必須の考え方です。
文字式だけでなく、方程式などでも使う考え方ですので、身につけておきましょう。
②は証明を書く、というよりは①で得られた「4n+1」という文字式を『3x+5に代入』し、『4の倍数=4×(整数)』であることを計算式で表せば良い問題です。
文字式を使った説明問題は、中2の一学期や中3の一学期にも学習する単元です。
この春休みに予習・復習しておくと良いでしょう。
大問3での出題としてはこれまでにない形式でしたが、問題自体はこれまでもよくみられたものです。
過去問をしっかり解くなどの対策ができていれば問題なかったのではないでしょうか。
4.図形の利用 配点:15点
最終問題は「図形の利用」でした。
(1)は「相似の証明」でしたが、仮定から『角ABC=角ACD』『角Aは共通』と相似条件が簡単に出てくるので、非常に解きやすかったと思います。
一昨年までの証明問題の正答率は10%程度、昨年は易化して20%程度まで上がりましたが、今年度の問題はより易化していることから、更に正答率は上がるものと思われます。
「揺り戻しの法則」により来年度の証明は難しくなるかも知れませんね。
(2)は「線分BEの長さ」を求める問題です。
これを解くには(1)から「相似比が3:2」であることを見つけなければなりません。
それを使い「辺CB:辺CD=3:2」ということが分かります。
さらに、三角形CBEにおいて、「角の二等分線と線分の比の性質」により『CB:CD=BE:DE』ということに気付けるか、が問われました。
中3生の「平行線と線分の比」の単元で扱われている内容ですが、まだ覚えきれていない受験生が多かったかもしれません。
(3)は(2)をさらに発展させた問題。
方針としては、三角形ABCの面積が18㎠と与えられているので、これをどんどん小さくし、最終的に三角形GFCの面積を求めていくことになります。
まずは(2)より辺BE=3㎝、辺ED=2㎝。
そして角BACの二等分線ですので、「BF:CF=3:2」となることを押さえておきましょう。
また、辺AEの長さが6㎝であることに着目し、三角形ACEが二等辺三角形であることに気づけるか、がポイントです。
「二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を二等分する」ので、「CG:EG=1:1」、これも押さえておきます。
それでは、まず三角形ABCを線分CEで2つに分けます。
三角形ACEと三角形BCEはそれぞれAE、BEを底辺として考えると高さの等しい三角形であることがわかります。
高さの等しい三角形の面積比は、底辺の長さの比に等しくなるので『三角形ACE:三角形BCE=6:3=2:1』となりますね。
つまり三角形BCEの面積は、三角形ABCの面積の1/3になりますので、『三角形BCE=6㎠』であることがわかります。
次は、三角形BCEを線分EFで2つに分けると、三角形BEFと三角形CEFができます。
こちらも先ほどと同じように辺BF、CFを底辺と考えると、高さが同じ三角形になるので『三角形BEF:三角形CEF=3:2』となります。
よって三角形CEFは三角形BCEの面積の2/5となり、『三角形CEF=12/5㎠』と出てきます。
さあもうひとがんばりです。
最後は三角形CEFを線分FGで2つに分けましょう。
同様に2つの三角形GFCと三角形GFEをCG、EGを底辺と考えると『三角形GFC:三角形GFE=1:1』となります。
求める三角形GFCの面積は「三角形CEFの半分」となるので『12/5÷2=6/5』
よって【6/5㎠】となります。
(2)(3)はなかなかの難題でしたね。
類題を何度も何度も解いていないと時間内に解き切ることは難しかったかもしれません。
以上、今回は令和3年度埼玉県公立高校入試【数学(学力検査問題)】の全問考察でした。
全体的には解きやすい問題が多い印象です。
取るべき問題でミスなく解答ができれば目標点はしっかりと取れるテストではありました。
出題傾向がまだまだ定まりきっておらず、特に令和3年度は出題範囲の縮小がありましたので、次年度以降の傾向も注視してく必要がありそうです。
次回は「数学(学校選択問題)」の考察です。お楽しみに。
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