卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

小6の時、家族に連れて行ってもらった糸魚川のヒスイ探しで、石に興味を持つようになった吉田楓矢さん。入学した飯山高等学校(以下、飯山高)探究科では、当初は信州大学を目指すものの、別の大学に進路変更していました。

高3で出会った先生に「総合型選抜で信州大学を目指そう」と言われたことで、忘れていた夢が蘇ります。将来を見定めた進路変更でモチベーションが上がり、苦手科目との付き合い方も分かってきました。結果、一度は諦めた信州大学の合格を手にします。

まつがく中野校の黒岩祐太先生とともに、吉田さんの大学受験を振り帰ります。

吉田楓矢さんのデータ

●出身校/長野県飯山高等学校探究科 ●将来の夢/地質調査の仕事

中3・8月

高校受験のためにまつがく中野校に入塾

高1・4月

飯山高校探究科に合格。バドミントン部が忙しくて週1回通塾。志望校は信州大学

11月

バドミントン部をやめてサッカー部に入部。通塾ペースは週3回に

高2

高2の終わりからは、平日は学校に近い飯山校、休日は自宅に近い中野校と使い分けて通塾。高校の自習室も積極的に使う。志望校は静岡大学

高3・4月

高校では探究科理系48人中15位くらいの成績

6月

atama+は英語から化学へ。英語は英単語のみ

8月

学校の先生の助言で、総合型選抜で信州大学理学部地球学コースを目指すことに

10月

総合型選抜の実地試験と面接

11月

10月の試験に合格。共通テストに向けてラストスパート

12月

苦手だった英語の得点率が45~50%弱まで上がってくるも、なかなか50%を超えられなくて焦りを感じるように

1月

共通テストでは自己最高得点。苦手の英語も50点台後半まで伸びた

2月

合格

現在

大学入学に向けて数Ⅲを独習中

1. 巡り合わせで初志貫徹

atama+だからできる2教室併用

黒岩

吉田くんとは、僕が中野校の校舎長になった2023年6月からの付き合いです。吉田くんは、中3の夏期講習の時に入塾してくれました。通っていた中学校の校門前で配っていた、まつがく中野校のチラシがきっかけだったんですよね。

吉田

高校受験を考えると今の勉強量じゃちょっと足りないなと思っていた時にチラシをもらって。夏期講習に行ってみて、atama+は自分の苦手だけできるのは画期的だなと思いました。当時、数学は苦手な部分があったので、そこを重点的にできるのがよかったです。

黒岩

その頃から、高校は飯山高校へと考えていたんですか?

吉田

中1の時から第1志望でした。他に須坂高校も考えたんですけど、遠くて。飯山高なら最寄り駅から電車1本で行けます。それに進学実績もけっこういい進学校だったのと、どうせ行くなら探究科がいいなと思って飯山高の探究科を受験しました。

黒岩

高校に入ってからは、まつがくは中野校だけでなく飯山校にも通っていました。

吉田

飯山校にも行きはじめたのは高校2年の終わり頃からです。それまでは飯山校があることは知っていたんですが、高2の終わりごろに初めて使えることを知りました。

黒岩

ふつうは違う校舎を併用するのはなかなか難しいけど、atama+でデータ共有ができるから可能なんですよね。

吉田

そうですね。高1の時は、当時入っていたバドミントン部が週7で練習が入っていたので、まつがくにもあまり来られなくて。あんまりハードだったのでやめて、高1の11月にサッカー部に入り直しました。そこからまつがくには週3くらい通っていました。そして、受験期になったらまつがくが休校の時以外、毎日という感じですね。

黒岩

受験前までのまつがくの使い方としては、定期テスト対策に重点があった。

吉田

そうですね、定期テスト対策です。受験のことはある程度意識はしていましたが。

黒岩

高1の時にすでに信州大学に行きたいと思っていたと聞いています。

吉田

そのあと数Ⅲが難しいなと思って、高3のはじめくらいまでは静岡大学にしようかなと考えていました。

高3で進路を決定づける運命の出会いが

黒岩

高3のはじめ頃、学校でのテストの順位は大体どのあたりだったんですか?

吉田

探究科の理系の中の順位になるんですが、48人ぐらいいて15位とか16位ぐらいだったかな。

黒岩

高3になって、突然進路が変わりました。

吉田

飯山高に、地学は教えていないけれど地学好きという先生が赴任してきたんですよ。それで、「信大の総合型選抜に挑戦してみない?」と言われたんです。

黒岩

運命の出会いですね。僕と出会った頃は静岡大学に行きたいと言っていて、英語がすごく苦手なんだけど、でもそこをがんばりたいと前向きに話していました。だから、大学に対して前向きにがんばっている子だなという印象を受けていました。それが8月に、まつがくに来て開口一番「志望校を変えます!」と言うので、おっと今から変えるのかとびっくりしましたよ(笑)。今回の対談にあたって資料を見ていたら、もともと信大に行きたかったのを一度諦めて、でも巡り合わせでまた信大を受けたというのは運命的だなと感じました。

吉田

いきなり進路を変えたいと言い出して、先生はどう感じていましたか?

黒岩

総合型選抜でその基準だったら、がんばればいけるなという印象でした。吉田くんが受けた理学部地球学コースの総合型は、実際に地層を見にいってレポートにまとめる実地試験がありました。試験場所のことも、吉田くんに総合型を提案した先生は予想できて対策もできたんですよね。その先生がいなかったら、多分受けてなかったよね。

吉田

受けてないです。総合型選抜で行けることもまったく知らないままだったと思います。

黒岩

話を聞いた印象だと、その先生に完全にロックオンされていたんだろうね。他に地学が好きな生徒はいなかったんだ。

吉田

いなかったですね。興味を持ったのは小6だったんですけど、小学校にもいないし、中学校にもいないし、高校もいない。誰もいないんですよ。

総合型に変更で“攻め方”も変わる

吉田

受験期まではatama+で数学と英語をやっていました。二次試験の対策にもなるかなと思って、メインは数学と思ってやっていました。

黒岩

志望校を変えることになって、吉田くんの中では勉強も変わったという感じですか?

吉田

全体的には変わらないですが、苦手な英語は共通テストだけになりました。じゃあ、もうひとつ苦手だった化学に手をつけようと思って、高3の6、7月ぐらいからはatama+の英語から化学に変えて対策していました。

黒岩

英語は一度勉強をやめていたよね。

吉田

そうですね、英語は英単語だけにしぼりました。

黒岩

攻め方を変えましたよね。勉強の仕方もそうですけど、多分将来が見えてきてモチベーションが一番変わったんじゃないかな。目標ボーダーも大きく変わったもんね。一般入試から総合型に変えることで共通テストの割合が6割から5割に下がったから、英語は単語中心で、逆に理系科目を上げていこうと戦略を変えました。面白いのが、その後英語が安定してきたんだよね。

吉田

夏頃は英語が本当にひどかったんです。4割くらいしか取れないのがざらで、年末にようやく4割を超えるようになって、本番直前には5割超えました。そして本番では50点台後半まで伸びて、結果的にはすごく上がったなという体感です。

黒岩

がんばっていた時期と、実際に点数につながってくる時期はどうしても時間差があります。国語は何か対策はしていたのかな。

吉田

漢文は『漢文早覚え速答法』という参考書を使ったんですけど、今ここで言うのもなんですけど、この参考書だけやるのはおすすめできないですね。その参考書では「これだけやっとけばいい」と書かれているんですが、共通テストではその部分を紛らわしくさせる問題が出てくるんです。古文は文法・単語を中心にやっていました。余裕がなかったので「古文常識」は手がつけられなかったんですけど。

黒岩

現代文はそんなに苦手ではなかった?

吉田

現代文は正直言っちゃうと“読み慣れ”なんですよね。現代文は出題される文章が長いので、気になるところにマークをつけておいて、問題を見て、ここの問いの根拠になるのは多分この辺かなとマークしておいたところを見れば、大体答えが書いてあるんですよ。過去問を使って、どこを読み取るかの練習を繰り返しやっていました。あとは読む速さですね。どれだけ早く答えにたどり着いて、次の問題に進めるかがカギだと感じていました。

黒岩

国語は、学校とあとは独習でやっていましたね。

吉田

はい。まつがくでは化学・数学・英単語という風に使い分けしていました。

黒岩

総合型で行こうと決めるたことでだいぶ方針がはっきりして、やることがそぎ落とされた感じでしたね。

2. 凝縮した1日

苦手科目の克服とモチベーションの維持

黒岩

受験勉強で苦労した点として、モチベーションの維持と、苦手科目の克服を挙げてくれました。吉田くんとしては、どういう風に対応していましたか?

吉田

苦手の英語は共通テストしか使わないことになったので、単語と読み慣れに注力しました。長文をどれだけ早く読んで早く理解できるか、目で慣れるというか……。ひたすら繰り返しやって長文に慣れるようにしていました。化学は点数が取りやすい分野があるんですよ。そこを重点的にやって、確実に点数を取れるようにしていました。

黒岩

苦手科目については、確実にできるところを落とさないことに集中していましたね。モチベーションの維持はどうでしたか?

吉田

これをやりたいからこの大学に行くんだ、と再確認してモチベーションを維持していました。疲れを感じた時は、5分でもいいからちょっと好きなことやったり、好きなものを食べたり、好きな動画を見てみたりしていました。それが終わったら、「じゃあもう1回やるか」といういう感じで、受験生ならみんなやっているようなことをふつうにやっていましたね。

黒岩

うまく対応できていましたよね。吉田くんが中野校に来るのは休日だけなので、学校で週末に模試が入ると2週間会わないこともありました。会った時にはちょこちょこ話をしていましたが、確かにスランプのような状態はなかったように思います。

実地試験と面接

黒岩

信州大学理学部地球学コースの総合型は、10月に実地試験と面接が先にありました。

吉田

受験日は10月21日でした。他と比べてずいぶん早いんですよね。

黒岩

そこで1回合否が出て、さらに共通テストも受験してという流れでした。

吉田

ここで合格しても、共通テストで落ちることもあります。

黒岩

まつがくでは面接の対策もそんなにやってないよね。

吉田

面接官が地学の教授で地学のことについて聞かれるから、地学に詳しい先生に面接官役をやってもらって、色々質問を投げてもらって対策しました。実地試験は、実際に地層を観察して、どんな堆積構造かを絵も交えてレポートにまとめます。たとえば、ここはもともと海だったから波の跡があって、波の跡が大きく見えるから昔は浅瀬だったとか。あとは堆積構造によってどちらが新しい時代なのかを突き止めるというのもあります。面接は実地試験をふまえた質問が出ます。

黒岩

かなり本格的なので、その先生がいなかったら相当ハードルが高いものになったんじゃないかな。

吉田

面接は受験生がひとりで、面接官は6人という……。圧迫面接ではないんですが、それに近い感じで教授がバーッと並んでいて。でも実際に質問するのはそのうちの4人だったんですよ。

黒岩

他の受験生はどんな感じでしたか。

吉田

12人いました。ほかの受験生としゃべる心の余裕はなかったですね。僕の高校は授業で地学が取れないんですが、他の受験生はみんな地学の授業を取っているみたいで教科書を読んでいました。そこで差を感じて、「なんでうちの高校は地学がないんだ!」と思っていました。12人中4人が合格と聞いていたんですが、結果的には7人合格していました。

黒岩

今回は大学の先生方から見て“豊作”だったのかもしれないね。実地試験はどこだったっけ?

吉田

生坂ダム(生坂村)のすぐ下あたりですね。

黒岩

行くだけでも大変だね。事前に下見にも行ったんだよね。

吉田

下見はすごく暑い時期だったので、朝7時40分に出て昼過ぎぐらいに帰っていました。初見じゃなかったのは助かりました。当日は、実地試験の会場に行く時、教授の車に乗るんですよ。車中の空気がピリピリしていて、心が持たないと思いました……。

黒岩

午前中に実地試験で、午後に面接。けっこう疲れたんじゃない?

吉田

疲れましたね。この1日に全部凝縮されていたので。

黒岩

僕は、試験会場が下見と同じ場所だったかどうかがまず一番気になっていました。「どうだった?」と聞いて、下見と同じ場所だったので、やったねと。吉田くんも自信満々で「これはいけました!」って(笑)。

吉田

合格発表の11月8日、僕はインフルエンザにかかってしまって。ネットで合格発表を見て、インフルエンザに苦しみながら合格を喜びました(笑)。

3. 共通テストまで駆け抜ける

合格しても気が抜けない

黒岩

合格したけど、まだ気は抜けない。

吉田

はい、ここから共通テスト対策を本格的にやっていました。

黒岩

共通テストの過去問は、結局何回くらいやりましたか?

吉田

暇があれば共通テストの過去問をやっていました。回数は教科によって違って、過去3年分だったり5年分だったり。最低でも3年分はやりました。

黒岩

この頃は、苦手の英語と化学が上向きになってきていて、得意の地理は7割くらい取れるようになっていました。僕としては、かなり安心感がありました。

吉田

合計点で5割が目標だったので、得意科目で引っ張ろうと考えていました。各科目5割以上だときつかったと思います。本当に苦手だと得点できないので。

黒岩

もうこのまま行ってくれれば、行けるだろうと思っていましたよ。

吉田

共通テストの直前は、お風呂入りながらも何かやっている感じで復習をやっていました。3日前くらいまでは過去問をいじったりしていましたね。でも、2日前くらいからは何もやらずに体調維持を優先していました。直前に詰め込んでも何も覚えられないのが分かっていたので、せめて体調管理をちゃんとしておこうと思って。

黒岩

淡々としていましね。出会った当初からあまり細かくスケジューリングしていなかったんですよ。ざっくり「いつぐらいまでにここまでやろうよ」と話せば吉田くんはやってくれるので。あとは、まつがく飯山駅前通り校の先生とも連携取りながら見ていたという感じですね。もうひとつ安心感があったのは、話を聞くたびに「だけど、こうやってやってけば大丈夫だと思う」と方向性が自分の口からしっかり出ていたことです。もちろん不安もあったと思うんですけど、自分で具体的に対策を見いだせているのはとても安心感がありました。共通テスト本番は、自己最高得点だったよね。

吉田

受験直後はできたという手ごたえがなかったんですよ。英語は2択までは絞り込めるけれど、どっちかなと悩む問題が本当にいっぱいあって。難しい問題もあって、できない、どうしようという焦りもあって、終わった直後はこれはダメかもしれない……という思いが一番に来ていました。

黒岩

今年の共通テストは、科目にもよりますが難化したところが多いですね。英語は特に難化したので、苦手な人からすると、うわっと感じたのではないでしょうか。

吉田

共通テストが1月13日、14日で、15日に学校で自己採点しました。苦手の英語で丸がいっぱいつけられて、どんどん笑顔になって(笑)。「これ、いけたんじゃないか」と思いながら丸してましたね。

黒岩

自己採点してようやくひと心地ついたんですね。

夢のきっかけはささいなこと

黒岩

ご家族は、受験期はどんな風に接していたんですか?

吉田

送迎をやってくれて、あとは受験生にプレッシャーのかかるようなことは何にも言われなかったので、気持ちは楽でしたね。

黒岩

共通テストを経ての最終的な合否は2月7日に発表がありました。

吉田

家族からは、「よかったね」とか、「やったじゃん」とか。「おめでとう」の言葉がありましたね。

黒岩

吉田くんの将来の夢は、地質調査です。小6の時に糸魚川でヒスイが取れると聞いて行ったのがきっかけだそうですが。

吉田

母が「ひすいラーメン食べたい!」と言って、連れていってもらったんです。きっかけは本当に些細なことだったんですよ。その時はヒスイを拾えなかったんですけど、他に面白い石がいっぱいあって、拾って後から調べました。また行きたいなとなって、誕生日に連れていってもらって。

黒岩

石の面白さから入ったんだね。

吉田

似たような色だけど別の種類だったり、同じつくられ方をしているけどこういう力が加わるとまた別の石になったりということが面白く感じていました。その後は、鉱物や岩石の本を買ってもらったり、何度か糸魚川に連れて行ってもらったりしました。ますます「こんな石があるんだ、面白いな」と思うようになって。最後に糸魚川に行ったのは、中2のゴールデンウィークあたりだったかな。長野県も、聞くところによると、全国に散らばっているいろんな岩石がまとまって見られるエリアみたいなんです。

黒岩

大学に行って免許を取ったら、自分で糸魚川まで行けますね。

吉田

免許は7月に取ります。道具は買ってあるのでいつでも行けます。準備万端です。

黒岩

サークルはどうですか?

吉田

地学系のサークルかサッカー同好会に入ろうかなと考えてますね。

黒岩

まつがくは2月いっぱいで卒業しましたが、数Ⅲを独習中だそうですね。やりたいことがあって大学に行けるというのは、とても素晴らしいことです。大学は自由なので、何に使っても時間はあっという間に過ぎていってしまうので、やりたいことに使ってくれたら嬉しいですね。これから受験する人に向けて、何かアドバイスがあればぜひお願いします。

吉田

苦手教科があったら、克服するまではいかなくても、 点数は絶対落とさないのは意識したほうがいいと思います。あと、数学はとりあえず黄色チャートやっとけ、ですね。共通テストは対策できるし、二次試験もある程度の問題が解けるまでは力がつきます。

黒岩

やった人にしか言えない言葉ですね。合格、本当におめでとう!

 

(取材・文/くりもときょうこ)