卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

佐久市にある野沢北高等学校の2年生だった伊藤廉太郎さんは、受験を見据えて春休みに塾を探していました。
もともと定期テストのためにコツコツ勉強を続けていましたが、目標は旧帝大。
自学自習では難しい部分を求めてまつがく佐久岩村田駅前校に入ります。

夏休みのオープンキャンパスで工学部から理学部に、共通テストの結果を受けて旧帝大の中で志望校を変更しましたが、その判断には「研究者になりたい」という軸が常にありました。

11か月の受験期間を、校舎長の阿由葉塁先生とたどりました。

伊藤廉太郎さんのデータ

●出身校/長野県野沢北高等学校 ●将来の夢/研究者

高2・3月

春期講習会中にまつがく佐久岩村田駅前校に入塾。当初は東北大学工学部志望。atama+の数学をはじめる

高3・5月

atama+に加えて二次対策として問題集『理系数学の良問プラチカ』を1週間10ページ以上のペースで進める

6月

サッカー部が一段落し、受験勉強を本格化。まつがくには毎日来て閉室時間まで学習する

7月

夏休みの学習方針を決める

8月

東北大学のオープンキャンパスに行き、理学部に志望変更

9月

物理の二次対策を問題集『名問の森』を使って1週間20ページのペースで進める

10月

共通テスト模試で74%得点。数Ⅱは9割、英語8割得点。学校で受けた河合塾の全統模試(記述模試)では、物理で学年1位に

11月

総合型選抜で東北大学理学部を受験して不合格

1月

共通テスト後に志望校を九州大学理学部物理学科に変更する

2月

前期試験で九州大学理学部物理学科を受験

3月

合格

1. ここに来れば集中できる

勉強できる場所が欲しかった

阿由葉

伊藤くんが入塾したのは高校2年生の3月、春期講習中でした。受験を見据えて塾を探していたんですよね。

伊藤

そうですね。部活も夏には引退して受験勉強が本格化するのと、家だとなかなか勉強しづらくて、勉強できる場所が欲しかったんです。あとは、勉強のペースも見てもらいたいと思っていました。

阿由葉

まつがくを知ったのは、インターネットとチラシだったそうですね。他の塾も検討したんですか。

伊藤

友だちが多かった一斉授業が主の塾をまず体験しました。レベルはバラバラ、ペース的にも自分の学習スタイルに合わないと感じました。

阿由葉

まつがくは春期講習で体験してどうでしたか?

伊藤

atama+の動画はふつうの映像授業より短くて、進めやすかったです。自分のペースでできるのも、自分には良かったですね。

阿由葉

塾に入るまでは、学校の定期テストのための勉強はやっていたようですね。

伊藤

高2まではある程度自分でできていたので、塾に入りたいとはあまり思いませんでした。高3に近づいて学力が伸び悩んでいたのと、独習だと難関大向けの数学が厳しい面もあって、まつがくに入りました。

阿由葉

廉太郎くんはサッカー部に入っていました。毎日のように部活を終えてから来てくれていました。

伊藤

試合の前日と当日に行かないくらいでしたね。

阿由葉

しんどくなかったですか?

伊藤

そういう時もあったんですけど、 ここに来れば集中できるので。

阿由葉

もともと塾に入る動機も、勉強に集中できる場所がほしかったということなので、うまくまつがくを使ってくれていました。

オープンキャンパスで進路の精度が上がった

阿由葉

入塾当初は東北大学工学部が志望だったので、高3の5月からatama+で数学をやってもらいました。数学は、記述と2次対策として問題集『理系数学の良問プラチカ』もやってもらいました。

伊藤

先生と相談して教材を決めて、ペースも組んでもらって。

阿由葉

国立理系を受けるならやっておいたほうがいいとアドバイスしたのを覚えています。

伊藤

そこまでハイレベルではなくて、網羅系の問題集より入試問題が多くのっていました。

阿由葉

いやいや、そんなに簡単じゃないんだけどね。国立の二次試験向けだよね。

伊藤

ⅠAとⅡBだけだったので、そこまで難しい感じではなかったです。先に網羅系の問題集を一通りやってあったのもあって、スムーズにできたと思います。数Ⅲはatama+でやっていました。

阿由葉

プラチカは1週間10ページというペースでしたが、それ以上進めてくることが多かった。廉太郎くんは、高2の段階で共通テストはかなり取れていたから、基礎がほぼ固まっていた状態でした。野沢北などの進学校は高2の時点で翌年を見据えて共通テストを解かせるんですけど、たしか8,9割取れていたよね。

伊藤

数Ⅰが8割ぐらい取れていました。

阿由葉

だから、数学の共通テスト対策はそこまで必要なかった。そのおかげで二次対策もわりと早い段階で取り組めたのは大きかったですよ。6月に部活が一段落して受験勉強が本格化してからは、受験勉強にいよいよ入ったなという感覚はありましたか?

伊藤

あんまりその意識はなくて、受験前になってようやく「受験勉強しているな」という感じでした。学校のテストに向けてコツコツやっていたこともあって、この日から急に勉強時間が増えたというようなこともなく。まつがくに入ったのが、今思えば受験の態勢に入るタイミングだったかもしれません。

阿由葉

定期テストに向けて勉強して積み上げてきたことが、総合型選抜を受けようという話に繋がったんじゃないでしょうか。

伊藤

そうですね。当初は工学部を志望していたんですけど、オープンキャンパスに行く中で、ものづくりの工学系より、理論や探究の理学系のほうが楽しいな、自分には合っているのかなと思うようになりました。

阿由葉

オープンキャンパスに行くと、志望がよりはっきりするかもしれません。実際に行って自分の目で見るのは大事です。夏休みはがんばろうということで、単元や進め方の方向性を決めて、全科目について何をどれぐらいまで進めるか確認しました。

伊藤

受験生はみんなやっているんですよね。

阿由葉

全員やってはいるんですけど、何をどれぐらい、どこまでやるかまで細かく計画してきちんと合意形成できても実行できる人は多くはないです。廉太郎さんの場合、共通テストでしか使わない地理でもこの問題集をここまで使おうという風に計画を立てそれを実行できました。

伊藤

計画を細かく立てられたので、あとはどんどんこなしてくだけでした。

阿由葉

毎週、どれくらい進んでいるかチェックは欠かさずやっていましたけど、進捗が遅れることはほぼなかったです。

2. 早めの基礎固めと二次対策がポイント

英検の勉強が受験勉強に

阿由葉

夏休み明けからは、河合塾の『名問の森』という問題集をはじめました。

伊藤

東北大理学部の総合型選抜を受けることになって、科目が物理だけだったので、重点的に対策する必要がありました。

阿由葉

二次対策も兼ねて、物理を先に仕上げようという作戦通り。しかし、1週間で20ページはすごいよね。けっこう難しい参考書だから。

伊藤

そうですね。でもその時は、ほぼ物理に全振りしている時期だったので。

阿由葉

総合型選抜が不合格だったとしても、物理は完成しているから他の科目に注力できるという戦略でした。物理に集中する前は、英数を固めていました。英語は自学だったんだよね。

伊藤

英語はすごく苦手だったんです。結局合格はしなかったんですけど、英検準1級の勉強をしたことで学力が伸びました。

阿由葉

英語は英検準1級の勉強がすなわち受験勉強になっていたんだね。

伊藤

そもそも英検を受けたことがなかったんですよ。私立は受けない予定だったし、国公立だと英検利用できる大学もあまりなくて。だから自分の中ではあんまりメリットはなかったんですが、目指すレベルは準1級ぐらいかなと思って勉強していました。

阿由葉

ここも戦略的ですよね。10月に学校で受けた河合塾の全統模試は、数Ⅱは9割、英語も8割取れていました。記述模試なので、どちらかというと二次向けです。

伊藤

この時、物理は高校で学年1位になりました。

総合型選抜は不合格だったけれど

阿由葉

そして、11月の頭に総合型選抜の試験がありました。

伊藤

一次試験は物理だけで、それが受かったら面接という順番でした。でも一次試験で落ちてしまって。

阿由葉

手ごたえは悪くなかったんだよね。

伊藤

わりと良かったです。点数開示があって、20点くらい足りなかったかな。

阿由葉

東北大の総合型選抜って、本当に難しいんですよね。一般入試を余裕で合格できるレベルの人が受かる感じです。

伊藤

合格点に大きく離れてはいなかったので、できる人たちが集まっていると考えたら、そこまでできていないわけではなかったのかなと思います。そもそも受かると思っていなかったので。

阿由葉

かなりいい線行ってたことが分かったし、その時の自分の実力を確認できたという点では良かったよね。総合型選抜の後から、化学をはじめました。

伊藤

化学も基礎的なところは、学校で配られる『セミナー』や『リードα』といった参考書を、定期テスト前にコツコツやっていました。化学の先生から『重要問題集』もちゃんとやったほうがいいと言われて、それを総合型選抜が終わったタイミングからはじめて、二次試験の直前までやっていました。

阿由葉

国語や社会は自分でやっていたよね。

伊藤

担任の先生が国語の先生で、本当にいい指導をしてくれて、共通テストは目標をクリアしました。でも得意ではないし波もあったので、文系科目はけっこう不安でした。

阿由葉

廉太郎くんは、プラチカと物理に注力していた時にかなり伸びている印象がありました。あとは物理で学年1位を取った模試の時に、もう一段突き抜けたと感じました。部活が終わって2,3か月くらいで、さらに上の段階が固まったというか。波はあるといっても、スランプは感じなかったですね。部活をやっている時も、廉太郎くんは「疲れた」と言ってましたけど、全然疲れた顔をしていなくて、淡々と来て淡々と学習してという感じだったよね。

伊藤

そうですね。でも、共テ模試とかで……。

阿由葉

確かに、たまに良くない時もちょこちょこあったけどね。共通テストの過去問は学校でかなりやっていたよね。

伊藤

学校の授業が途中から共通テストの予想問題を解く時間に変わって、だいたいは学校でやっていましたね。

阿由葉

共通テスト対策は10月からやる予定だったんだけど、二次対策に注力していたので、11月の直前期になりました。旧帝大以上になると二次の比重が重くなるので、共通テストの対策はどうしても直前になりがちです。もともとのベースがあるからできるわけなんだけど。

伊藤

旧帝大が目標なら、早めの基礎固めと二次対策は肝になりそうですね。

阿由葉

間違いなくそうですね。

3. 大学合格はゴールじゃない

研究者という軸でブレずに志望校決定

阿由葉

共通テストの前日はどういう心境でしたか?

伊藤

あんまり覚えていなくて……。共通テスト本番は、文系科目は目標をクリアできました。数学が良くなかったんですよね。

阿由葉

数学は難しかったからね。

伊藤

そこまでの難化とは言えませんが、簡単ではなかったですね。自分の実力不足はもちろんですが、緊張や練習不足もありました。

阿由葉

旧帝大は、ボーダーが高いというのはあります。

伊藤

数学は85%、全体では80%は欲しかったですね。

阿由葉

英語が難化していたのもあるよね。

伊藤

英語で大失敗しちゃって。英語は比較的得意になっていたので、そこで失敗したのは痛かったです。

阿由葉

それで志望校を変えることになって。

伊藤

塾に入るタイミングと、志望校を決めるタイミングで、大学についてはけっこう調べていたんです。まず国公立で、自分がやりたい素粒子や宇宙関連の研究施設や研究室が充実している大学という切り口でいろいろ見ていました。そこで九州大学が選択肢として上がってきて。

阿由葉

模試では出していなかった“隠れ候補”でした。

伊藤

やはり遠方なので。でも、研究室や施設に魅力は感じていました。

阿由葉

もともと調べていたからこそ、わりとすんなり出てきたよね。英語の配点が生きるという戦略的な部分と、いい研究室があるという部分と。当時のメモを見ると、ボーダーより低ければ横浜国立大学や千葉大学とあります。でも、レベル的にはどうしても下がってしまう。九大ならレベル的にはスライドする感じで。英語のリスニングの配点が九大は良かったんだよね。

伊藤

判定も、東北大はC寄りのDで、九大ならBでした。

阿由葉

長野県から九大に行く人はあんまりいないから、よく決断したと思います。

伊藤

就職を考えると関東圏のほうがいいと思うんですが、目指しているのは研究職なので。

阿由葉

研究者になりたいか、就職したいかで、おのずと判断基準は変わってきますよね。どこに力点を置くべきかがブレない、いい判断だったと思います。

過去問だけでは不十分

阿由葉

九大の理学部物理学科の二次試験の科目は、東北大理学部と同じでした。

伊藤

物理と化学、英語、数学の4科目です。

阿由葉

共通テストの後は、ひたすら九大の二次対策でした。

伊藤

過去問中心だったんですけど、問題集も同じくらいの時間を割いていました。

阿由葉

過去問だけだと不十分というのも、旧帝大ならではの対策ですよね。

伊藤

高校の二次対策の授業も、自分にはけっこう合っていました。特に化学はけっこうレベルの高いところをやってくれたので、助かっていましたね。

阿由葉

野沢北高校は先生たちのバックアップも充実していて、廉太郎くんはそれをうまく活用していましたよね。サッカー部の友だちも優秀な人が多くて刺激になっていたようですね。

伊藤

周りの人からもいい影響を受けていました。仲のいい人も優秀だったので、教えてもらったりして。自分よりも高い目標を持って現状に満足しない優秀な友だちの存在が、モチベーションになっていました。

阿由葉

二次試験の当日は。

伊藤

手ごたえは良かったです。数学がここ数年難しくて、目標では半分行けばいいかなと思っていたんですね。でも今年は易化していて、数学はわりと取れました。

阿由葉

理科が難化していたんだよね。

伊藤

得意の物理ができなかった印象があります。化学もそんなにできたわけではないんですが、学校でやったテーマが出たりして、授業が生きました。

“納得感”のある戦い方

阿由葉

合格発表はインターネットでした。自宅で見たんですよね。

伊藤

家族は仕事でいなかったので、ひとりで見ました。自分は滑り止めを受けていなかったので、ホッとしました。安心した気持ちが大きかったですね。

阿由葉

事前の面談で、併願の私立は受けない、ダメなら浪人するという話をしました。

伊藤

担任の先生とも話して、後期も一応出願はしていたんです。前期の結果を見てどういう気持ちになるかはその時にならないと分からないので。でも、後期は安全策でレベルを下げることになってしまうし、やっぱりもともと志望していたところに行きたい気持ちが強くて、ダメだったらもう1年がんばろうと思っていました。

阿由葉

親御さんも喜んでくれたでしょう。

伊藤

もちろん喜んでくれましたが、そこまでではないというか。もともと親はあんまり干渉してこなくて、極端に言えば、大学に行かなくて就職でもいいという感じだったので。

阿由葉

当日は僕も早めに校舎に来て待機していました。発表は12時だったかな。12時7分頃にはもうLINEが来ていて、良かったなと。

伊藤

受験番号の写真を送りました。

阿由葉

もともと、逆転合格を狙うのではなく心理的な余裕も残しつつ逃げ切る戦略だったし、廉太郎くんの感触から大丈夫かなと思っていました。廉太郎くんがたどったルートは、旧帝大の戦い方として「やっぱりこういうことだよな」と、納得感のあるものでした。自分の戦略を持っていて、こちらからの提案やアドバイスを素直に実行できる。それができたというのは大きかったと思います。そういえば、ピアノもずっと続けていたんだよね。

伊藤

保育園の時からやっていて、高3でやめました。いい先生で、ショパンとかの難しいソナタもやって、コンクールでもわりと良い結果が出せました。そもそも参加する人がそんなに多くないというのもあったんですが、東海大会にも出ていました。

阿由葉

すごい! ショパンが弾けるなんていいなぁ。なるほど、だから大学では音楽サークルに入りたいと言っていたんだね。

伊藤

勉強したいので、折り合いをつけながらにはなりますが。

阿由葉

留学にも興味があるとか。

伊藤

海外には興味があるし、研究者になりたいので世界中の人と接したいというのはあります。語学留学だったらカナダやアメリカがいいですね。東南アジアやヨーロッパにも行ってみたいです。

阿由葉

楽しみですね。これから大学受験という人に向けて、廉太郎くんからアドバイスをお願いします。

伊藤

自分で計画を立てたり考えたりするのは大事な力だと思います。まず自分でやってみて、頼れる人に頼りつつ固めていくのも大事。自分でここまでにこれはやろうと計画する力は先々も生きるし、大学合格はゴールじゃないので。勉強の仕方も含めて、その場しのぎではあんまりやってほしくないなと思います。

阿由葉

重みのある言葉ですね。受験を通して得たものとして、「がんばれば1日にできることはけっこうある」というのと、「実際にやってみることがすごく大事」という2つを挙げてくれています。今の話にも通じますね。

伊藤

そうですね。振り返ると、部活が終わってからは何もやることのない休日もあって、けっこう時間はたくさんあったんですよね。自分は問題集をはじめるタイミングがそこまで早くなかったので、そういう時間を使えばできたな、1日でできることはけっこうあるなという思いがあります。とりあえず進めてみるっていうのも大事なのかな。

阿由葉

廉太郎くんは、こちらが引っ張っていくというよりはフォローに徹することでうまくいったんじゃないかと思っています。将来の方向性も廉太郎くんの中で決まっているので、大学受験と同じようにそのまま思っている通りに未来を描いてほしい、叶えてほしいですね。九州は遠いけど、がんばって!

 

(取材・文/くりもときょうこ)