卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

もともとモノづくりが好きだった土屋直太郎さんは、小5の担任の先生に「高専に行ったほうがいい」と言われ、そこからずっと高専を目指してきました。中3の体験入学で話した先輩と、好きな車のエンジンが同じだったことで、高専へのモチベーションはMAXに。

「余裕はあったほうがいい」とどこか飄々としている土屋さんですが、推薦より倍率の高い一般入試に向けて、受験勉強はかなり追い込みました。土屋さんの受験期を伴走した、まつがく飯山駅前通り校の大内隆弘先生と、受験期を振り返ってもらいました。

土屋直太郎さんのデータ

●出身校/飯山市立城南中学校 ●将来の夢/自動車開発エンジニア

小5・12月

当時の担任の先生に「高専に行ったほうがいい」と言われて高専を目指そうと考える。まつがく中野校に、プログラミング「キュレオ」をやりたくて入塾。のちに引っ越しで飯山駅前通り校に移る

小6・12月

中学進学と高校受験を意識してatama+に移行

中3・6月

英検準2級合格。atama+の数学(レベル2)が修了

7月

高専の体験入学で進学したい気持ちがより高まる。atama+英語を修了

8月

高専の過去問5年分を年末までかけて5周やる。受験対策トレーニングで英語は常に上位に入る

11月

信学会の模試でC判定。理科の成績が急激に上がる

12月

予想問題集に取りかかる。2回分を2~3周

2月

高専の入試に合格

3月

高校の範囲を先取り学習中

1. プログラミング目的で小5の時に入塾

担任の先生に「高専向きだね」と言われる

大内

直太郎くんは、小学校5年生の時に、当時の担任の先生に「高専に行ったほうがいい」と言われたんだよね。

土屋

そう言われたきっかけはもう覚えていないんですが、当時の担任の先生は生徒のことを見る目がある人だったんですよね。俺がモノをつくるのが好きだったからかもしれません。それで、いつからか「もう高専しかない」という感じで目標にしていました。

大内

まつがく中野校に、小5の12月に入っています。最初は「キュレオ」というプログラミングをやるのが目的だったんだよね。

土屋

プログラミングが将来に役立つと言われていて、親が探してくれました。

大内

まつがくは、どこの教室も実はプログラミングもできます。特に小学生のうちはプログラミング目的で入塾するお子さんは少なくないです。当時はどれくらいの頻度で通っていたの?

土屋

週2回ぐらい。1回80分だったかな。

大内

小6の12月から、中学に上がるからということでatama+に移行しました。

土屋

教科は英語と数学でした。中学ではパソコン部に入っていて、まつがくは週3,4回通っていました。先取り学習がメインで、テスト前はテスト勉強もして。3年になってからはほぼ毎日通っていました。

大内

受験期に入るまでの中学時代は、「この日までにこのぐらいやっといてね」というのを毎週繰り返していたね。学校よりまつがくでの学習のほうが進んでいる状態でした。

同じエンジンが好きなのは運命……!?

大内

直太郎くんの将来の夢は自動車の開発エンジニアで、好きなエンジンがあるんだよね。

土屋

マツダのロータリーエンジンです。フランスで行われる「ル・マン24時間レース」は、低燃費高効率で速さを競うのが特徴の「グループC」というカテゴリーなんですね。そのル・マンで、日本メーカーで最初に総合優勝したのがマツダの787Bというロータリーエンジンを搭載した車なんです。すごいなと思って、ロータリーエンジンに興味が出て調べ始めました。

大内

ご家族で車好きな人やレース好きな人がいたのかな。

土屋

俺の叔父さんが車やドライブが好きな人だったんです。ときどき車に乗せてもらって、それで興味が出てきたというのもあります。

大内

そんなに車やエンジンに興味があったなら、7月の高専の体験入学時のエピソードは運命的ですね。

土屋

部活紹介があって、エコノパワー部という部活動があったんですよ。そこの先輩に「何でも質問していいよ」と言われたんですね。その先輩は、結構有名な自動車用アフターパーツメーカーのGreddy(日本ではTRUST)のTシャツを着ていたので、思い切って「好きなエンジンは何ですか?」と聞いたんです。先輩の答えは「ロータリーエンジン」で、これはもう高専に行くしかない! という気持ちになりました。

大内

いやもう話が全然わからない……! マツダは分かるけど、ロータリーエンジンや車のパーツメーカーになると疎いのでわからないなぁ。でも、高専に行きたいモチベーションがすごく上がったのはよくわかるよ。

土屋

小学校からずっと高専一択だったので。

大内

高専はちょっと特殊で、入試では英語・数学・理科の得点が2倍になって傾斜がかかるんです。その3科目はしっかりと取れなきゃいけないよと、定期テストの時にいつも言っていたのを覚えています。

得意な英語で英検も準2級に

大内

直太郎くんは、英語が得意だよね。

土屋

小学校の1,2年の頃に、英会話のレッスンに通っていたんです。

大内

中3で英検準2級だからすごいですよ。高校中級程度ですから。atama+も英語は中3の7月に、数学は6月に中3までの範囲を修了していました。直太郎くんの特徴は、すごくたくさんやった教科は急に伸びるところ。中3になる春先から夏前まで一番やっていたのが社会だったよね。

土屋

社会はめちゃくちゃやってました。

大内

「(数学は)やらなくていいの?」と聞いたら、「家でやってるんで大丈夫です」と言われたのを覚えています。テストの成績も当時は、社会が英語と並ぶくらい取れていたんです。この時期に数学ではなく社会をメインでがんばったのは、危機感があったんだよね。

土屋

危機感、ありましたね。高専入試としては相対的に重要度は低いんですけど、ちょっと固めておかないとと思って。

大内

すごくがんばって得意の英語と同じレベルまで持っていったのを見て、直太郎くんの能力の高さを感じました。

2. めちゃしんどかった受験期

11月で模試がC判定

土屋

夏休みぐらいから過去問をやり始めて、5年分を5周やりました。12月に予想問題集を買うまでは過去問しかやってませんでした。

大内

夏休みは1,2年生の時と比べたらかなりやっていたけど、そこからさらにやりこんだピークは受験直前だったかな。理科も対策していたよね。

土屋

理科は学校の定期テストで間違えた単元を、ワークとか使ってやっていましたね。

大内

保護者懇談でも、当時は社会がすごくできていたから、「でも、やっぱり数学・理科のほうが……」「そこはやっぱり心配ですよね」という話が出ていました。

土屋

それで理科をやったんですよね。

大内

11月の模試では理科が上がって、その頃には社会は逆に落ち着いていました。ただ、判定はCだったんだよね。

土屋

やばいっすね。

大内

この前にもまつがくの内部模試とか受けていたんだよね。ただ、模試は基本的に公立高校の傾向がメイン。公立高校はシンプルな問題が多くて、高専はちょっと癖が強いかな。11月は信学会の模試で、やっぱり公立高校向けだったんだよね。

土屋

でも、公立高校向けのテストが取れなかったら、高専のテストはもっと難しいんだから取れないよね、という話になってくるんですけど……。

大内

これ大丈夫か、という話はしてたんです。11月の模試の前までも、ちょっと心配だなというのはありました。英語はまつがくで毎週土曜日にやる受験対策トレーニングでも常に上位で、安定していたんですよね。だから、懸念があるのは理科と数学だった。

土屋

数学は、12月か1月くらいから、教科書の裏にある応用問題をめちゃくちゃやっていました。高専のテストは基礎というより応用問題なので。あとは、12月に出てきた予想問題集を買って、2回分を3周やりました。

大内

予想問題集をやっている時は、手応えはありました?

土屋

ありました。解けてるなという手ごたえも、わかってないなという手ごたえもありました。

大内

両方確信があったんだね(笑)。

土屋

高専の傾向は、問1が結構難しくて、問2・3が若干できて、問4が全くできないみたいな感じだったんですよ。だから、取れないところに時間かけても無駄だから、取れるところを確実にしようと思ってやっていました。

大内

あとは、やりきれないぐらいの量の宿題を出していました。理科と数学をメインで。内容は、その時期やっていなかった過去問や予想問題集を、直太郎くんがお休みの日月に出していました。2,3週で2年分、3年分やってもらって、わからなかったところや間違えたところはとにかく見直し。

土屋

めちゃしんどかったです。

Wi-Fiのルーターを隠される

大内

そんなわけで、直前はかなりやっている感じだったよね。学校行って、まつがくに17時半ごろに来てラストまで4時間くらい勉強していたかな。

土屋

家に帰ってからも1時間やっていました。

大内

休みの日は……。

土屋

10時くらいまで寝てました(笑)。

大内

13時からの受験対策トレーニングはやっていたよね。それまでにやっといてねと宿題を出していたので。

土屋

その時はもう少し早く起きてました(笑)。

大内

直前期はみんな追い込みですが、力をMAXで出し切っているかどうかは、私は休憩時間の量で見ています。まつがくで学習している時に、ふだんトータルで45分休憩している人が休憩を30分、25分という風に減らしてまで集中してやっているようであれば、力を出し切っていると思います。休憩時間が今までと変わらなければ、まだ余力を残しているなと。もちろん、休憩時間を取らないほうがいいということではありませんし、家での様子は直接はわからないというのが前提です。

土屋

先生がそんな風に見ていたとは知りませんでした(笑)。

大内

フフフ。直太郎くんは、息抜きはどうしていたの?

土屋

ゲームやるかネット見るかですね。ただ、入試の1か月前にケータイを没収されて。そこからはパソコンで見ていたんですけど、「ネット見過ぎ」と親に言われて、1週間前からはWi-Fiのルーターを隠されました。

大内

ご家族もネットが使えなくなるよね。

土屋

そうっすね。家族も使えないです。親は携帯の回線があるからスマホで見ると言っていました。

大内

じゃあもう勉強するしかないみたいな感じだった。

土屋

勉強するしかなかったんですけど、ネット環境がなくなったところで勉強時間が増えるかと言ったら、誤差の範囲なんですよね(笑)。ただ、ネットを見たいという煩悩はちょっと減ったので、勉強に少しは身が入ったかな。

大内

そうだったんだね。

土屋

この時期は自分としては結構やりこんでいて、たまにうとうとして先生に起こされることがありました。

大内

まつがくの先生たちの中で、直太郎くんの居眠りを見つけたらすぐに声をかけてくださいということになっていました。厳戒体制でした(笑)。

そして、高専の入試が2月11日。これは直太郎くんに限らずどの生徒さんに対してもそうなんですが、やはり心配な気持ちはあります。でも、直前になると私たちも気持ちが振り切れるんです。直前期は今できることをやらせきるしかないから、今できるMAXの量の勉強をしてもらえれば、あとはもう送り出すだけなので。

3. 3人受験して合格したのはひとり

ついさっきまで見ていたところが出た!

大内

試験の前日、最後に言ったのは「とにかく全てマークを潰してこい」。わからなくても塗ってこいと。

土屋

無回答が一番点にならないですからね。当日はさすがにちょっと緊張しました。最初の科目が理科だったので、理科でちょっと心配だなと思っていた単元を見ていたんですよ。いざテストがはじまって問題を見たら、ついさっきまで見ていたところが出ていたんです。

大内

エンジンの話に続いて、“土屋伝説”を補強するエピソードだね。どういう問題だったっけ?

土屋

深成岩とか地学系ですね。その辺全然ダメだなと思っていたので、ちょうどよかったです。

大内

幸先よかったよね。

土屋

でも、テストが終わって問題を改めて見ていたら、間違えているところが結構あって、「これは落ちたな」と。今年の倍率は合計だと1.18ですが、学力選抜だけだと1.3~1.4倍だったんですよ。知り合いからも高専は学年トップの人が受験するという話を聞いていたので、結構ギリギリだった自分からすると、自分より上の人がゴロゴロいるようなところにいるんだ……かなりヤバいな……と思っていました。

足りていないと言われていた評定は……

大内

合格発表は2月15日でした。

土屋

午後4時にネットで発表でした。学校から帰ってきて見たんですが、学校の先生からは平日だから電話しなくていいと言われてたんですけど、嬉しすぎて電話しちゃいました。担任の先生も学校で見ていたみたいで、めちゃくちゃ喜んでいました。

大内

ご家族の反応はどうでした?

土屋

家で親と見たんですけど、最初は「絶対これ違うやつだよ」と言って信じてくれなくて。たぶん、家での俺の態度からすると絶対合格するわけない感じだったんだと思います。だから、ワンテンポ遅れて「え、ほんとに合格したんだ」という反応でした。そのまま、貼りだされていた合格発表を見に高専まで行きました。

大内

私は電話をいただきました。いやー、嬉しかったですね。電話での直太郎くんの第一声が、「ありますね」だったんだよね。思わず「何が?」って(笑)。

土屋

「受かりました」じゃなくて、「(番号)ありますね」って(笑)。

大内

同じ中学から高専を目指した人はいたのかな。

土屋

3人いて、合格したのは俺だけでした。当日のテストの点数だけじゃなくて、持っている資格とかも加味されるみたいです。

大内

英検準2級が効いたのかもしれないね。評定は、足りているのに足りていないと言われていたんだよね。

土屋

直前まで「足りていない」と言われていて、「おいマジかよ」と思っていました。受験直前の親との懇談では、「評定は、本当は足りています」と言っていたらしいです。俺に「足りている」と言うと、気が緩むと思ったみたいです。

大内

先生、直太郎くんの性格を知り尽くしてますね。

土屋

わかってますね。たぶん先生としては、「評定が足りていないからもっと点数を上げろ」と言いたかったんですよね。A判定に持っていきたかったんだと思います。

大内

推薦は最初から考えなかった?

土屋

推薦はワンチャン取れたらいいかみたいな感じだったんです。200名合格するうち、120名は推薦で一般入試は80名。推薦のほうが多いんですよね。俺は体育や音楽もマジで全然ダメだったので、内申点はそこまでいいとは思ってなかったんです。俺の知り合いで、推薦で高専行った人がいるんですけど、評定の合計が40超えているような人だったので。

大内

高専の推薦に必要な評定はかなりハイレベルだね。でも、より競争率の高い80名の中に入ったわけだから、それはそれですごいよ。

取れるなら推薦がおすすめ

大内

合格してからは、高校の先取り学習を進めています。留年が心配だって言っていたよね。

土屋

そうですね。高専は定期テストが難しいらしいので。担任の先生の知り合いで、高専を留年して退学した人がいると聞いて、留年はいやだなと思って。

大内

高専に入ってもまつがくは続ける予定ですね。

土屋

授業の進め方も他の高校と違っていて、特に数学が早く進むみたいなので、まつがくで先取り学習していきたいです。

大内

この後の進路はまだ決まっていない?

土屋

高専で5年過ごした後、就職するか進学するかはまだ考えてないです。

大内

高専は就職先も多いし、四大に編入することもできる。進路がいろいろ考えられるよね。最後に、これから高専を目指している人にアドバイスがあればぜひ教えてください。

土屋

英・数・理が2倍になるので、社会と国語は捨てたほうがいいですね。

大内

(笑)。

土屋

応用問題をはじめるのが遅かったので、慣れておく意味でも、もっと早くからやっていたほうがよかったなと思います。今年は少し傾向が変わってたんですよ。それからマークですね。マークミスをなくすのと、わからなくても埋めておく。あとはやっぱり、評定のハードルは高いですが、推薦が取れるようにしておいたほうがよかったかなと思っています。

大内

ありがとう。高専は入学したから大丈夫ということはないので、これからも慢心せずにがんばっていきましょう。

 

(取材・文/くりもときょうこ)