卒業生x校舎長対談 卒業生x校舎長対談

数学を何とかしたいと高2の12月にまつがくへ入った小山翼さん。もともと勉強が苦にならなかったという言葉通り、半年で模試の判定をEからBへ上げるほど怒涛のペースで学習を進めました。
苦手だった数学も、最後は楽しみながら問題を解いて高得点を取れるまでに。

運動公園校の校舎長・鶴吉雄一郎先生いわく「手がかからなかった」小山さんではありますが、本番では波乱も経験します。持ち前の修正力でどう乗り切っていったのでしょうか。鶴吉先生との対談でひも解いていきます。

小山さんのタイムライン

高2・12月

まつがく長野運動公園校に入塾。週3回のペースで学習をはじめる

1月

入塾後、最初の模試で東北大学E判定

高3・4月

4月末までに英語・数学の教科書レベルの学習をすべて終え、5月から応用に入る

6月

4回目の模試で東北大学B判定。6月末から共通テストの過去問に取り組む

8月

共通テストの過去問、5教科7科目の10年分を終える。8月下旬の模試で東北大学A判定

1月

共通テスト本番では東北大学C判定に。前期試験の対策に取り組む

2月

併願の私立大学を受験。同志社大学文学部文化史学科(一般入試)は不合格。立命館大学文学部人文学科歴史研究学域(共通テスト利用)に合格

2月25日

東北大学の前期試験。すぐに約2週間後の後期試験(京都府立大学)対策に移る

3月10日

合格発表。無事、合格する

1. 目標は東北大学

しっかり勉強できる環境に身を置きたかった

鶴吉

小山くんは高2の12月にまつがくに入りました。

小山

高校に入るまではそれなりに勉強していたんですが、入学後はほとんど勉強していませんでした。学校以外の学習としてやっていた進研ゼミも、ちゃんとはやっていなくて。長野高校は勉強するもしないも自分次第。「聞きたいことがあればどうぞ」と、生徒の自主性に任されていました。それで、しっかり勉強できる環境に自分の身を置いたほうがいいかな、と思って入りました。ちょうど班活(部活)が冬は完全オフになるので、ちょうどいいタイミングでした。

鶴吉

部活は軟式野球だっけ?

小山

小・中と野球をやってきて、高校に入って軟式野球が珍しく感じたのと、ゆるい雰囲気がいいなと思って入りました。

鶴吉

中学は三陽中学ですね。

小山

以前から、やろうと思ったことは割とできてしまうところがありました。逆に言えば、できていないのはやっていないから。ちゃんとやればだいじょうぶと思っているところがあって、実際その調子で高校も受かっちゃったので。

鶴吉

まつがくに決めたのはどうしてですか?

小山

スマホを見ている時に出てきた広告です。東進の冬期講習を宣伝していたので、この機会にやってみようかなと思いました。まつがくは講義形式ではないというのも大きなポイントでした。自分のペースでできそうだな、と。

鶴吉

入塾時にお母さんも交えて三者面談しましたけど、お母さんがあまり話さなかったのが印象的でした。

小山

自分に任せてくれていました。昔から、勉強しなさいと口うるさく言われたことはなかったです。「お金のことは気にしなくていいから、やりたいことをやりなさい」と言って、とても応援してくれていました。本当にいい親ですよね。

鶴吉

親御さんがお子さんを引っ張ってきて「何とかしてください」というケースは、なかなか難しいです。塾での勉強も受験勉強も、自分で覚悟を決めてできるかどうかなので。

小山

最初は週3回のペースで通い始めました。ちょうど学校の帰り道だったので、立ち寄りやすかったです。

鶴吉

けっこう長い時間いたよね。

小山

入る段階で、自分に足りないものが多すぎるのは分かっていたので。学校の成績も良くて真ん中くらい。とりあえずできるだけやって盛り返していきたかったんです。

鶴吉

学校では140番くらいかな?

小山

数学が分からなくて、足を引っ張っていましたね。もともと歴史が好きなので、日本史と世界史は積極的に勉強していました。国語もあまり苦手ではなかったので、やればそこそこできました。それで、まつがくでは数学を主にやっていました。

鶴吉

小山くんは、最初からロードマップが明確でしたね。東北大学に照準を定めていた。あとはもう、やるだけという状態です。

小山

東北大レベルの学力を身に着ければ、選択肢が広がると考えていたからです。なので、最初は目安や目標のつもりでした。調べていくうちに、東北大に行きたい気持ちが固まっていきました。

鶴吉

まつがくで受けてもらった最初の模試では、東北大はE判定でした。

「エースですよ」

鶴吉

それが、6月の模試ではB判定まで上がったんですよね。はたで見ていてすごくがんばっているなと思っていましたが、自分としては力がついている実感はありましたか?

小山

国・数・英の3教科は学力が固まってきている手ごたえを感じていました。

鶴吉

4月末までに数学と英語の、高1から高3の教科書レベルの学習は終わらせていました。東進の教材とatama+(アタマプラス)を使っていましたね。

小山

数学は高1の最初から全部さらったので、ちゃんと基礎が身に着いたと感じました。数学が分からなくてまつがくに入りましたが、ここで克服できたと思います。

鶴吉

12月の模試では、数ⅠAが98点だったもんね。

小山

はい。

鶴吉

5月に部活を引退してからは、ほぼ毎日来ていましたね。同期の中で、小山くんは明らかにエースでした。共通テストの過去問10年分も、いちばん最初に終わらせたのは小山くんです。2か月で5教科7科目を10年分こなしたのですから、大したものです。

小山

すごく早いペースでしたね。勉強すること自体はあまり嫌いじゃなくて、特に受験期の後半は数学が楽しくなっていました。共通テストの数学より二次試験の記述問題が楽しく感じるほどで。ゲーム感覚でしたね。やればやるだけ成績は伸びて、結果も出ていました。

鶴吉

学校のテストはどうでした?

小山

順位はかなり上げることができて、最後の定期考査は29番でした。数学だけだと1番を取れたこともありました。僕は文系なので、数学の成績がいいと偏差値がぐんと伸びるんですよ。それで順位も上がったんだと思います。最後のほうは、数学がよくて国語が少し不安という逆転した状態になっていました。

2. 順調に成績を上げていく

物心ついた時から歴史が好きだった

鶴吉

小山くんは歴史が好きなんだよね。

小山

物心ついた時からですね。小さい頃からNHKの大河ドラマを見ていました。あとは、兄が買っていた武将の伝記マンガです。兄の歴史熱は早々にさめてしまったんですが、兄が読まなくなったタイミングで僕が小学校にあがって、夢中になって読んでいました。

鶴吉

それはすごいね。中世日本史が特に好きなんだよね。

小山

親が言うには、大河ドラマ『風林火山』のオープニングが流れると、寝ていた僕が起きてきたらしいです。好きな武将はやっぱり地元の真田家で、『真田丸』も見ていました。中世は、いろんな武将がさまざまなことを考え、一番わちゃわちゃしていた時代。生きざまも魅力的です。

鶴吉

ゆくゆくは中世の古文書の研究をしたいんだよね。それで、大学卒業後は本場の関西へという話になりました。

小山

最初の頃は京都大学を考えたこともあったんですが、早々に無理だとあきらめました。東北大学を卒業して、京大の大学院へ進学したいです。

鶴吉

そして、日本史の高校教師になってから研究機関へというロードマップを描いています。話を受験勉強に戻すと、8月下旬の模試でついにA判定が出ました。

小山

正直、これでA判定かと驚きました。自分としてはそこまで手ごたえがあったわけではなかったので。

後半はしんどそうにしていることも

鶴吉

小山くんはメンタルが強くてブレずに計画通りに学習できていたから、自学自習でも行けそうな勢いだったね。

小山

学校の勉強だけだったら、こなす問題の量がぜんぜん違うので、ここまでの学力をつけるのは難しかったと思います。まつがくでは、やりたいと思った時に、問題の量もバリエーションも豊富に用意されていたので。

鶴吉

あと、模試などで課題が出てきた時の修正する力もすごかったです。自分で考える力がありますよね。お母さんがキーパーソンだと思いました。小山くんを信頼して任せて、考えさせていた。強制もしない。

小山

母自身が真面目できっちりしている人です。こどもには、やりたいことはやらせてあげるから、ちゃんとやりなよという感じでした。

鶴吉

親子関係の距離感の取り方がうまいんだろうなと思って見ていました。つかず離れずで。お母さんから相談を受けたことはなかったですね。小山くんは、ブレずに着々とできるのは昔から?

小山

小・中とやっていた野球でキャプテンになった時に、ガマン強さは身についたかもしれません。勉強については、勉強する時としない時のメリハリは意識してつけていました。今日は無理だなと思ったら休んでいたので。

鶴吉

そのあたりのバランス感覚が優れていますよね。そして、追い込みもすごかった。11~12月頃、小山くんの表情を見て「しんどい?」と聞いたら、さすがに「しんどいです」と言っていましたね。どんな風に、気持ちを切り替えていたんですか?

小山

映画が好きなので、11月頃まではけっこう観に行っていました。

鶴吉

どんな映画を観るの?

小山

洋画が多いですね。マーベルが好きで、『ブラック・ウィドウ』とか観ていました。

鶴吉

学校の友だちとはどんな風だった? 長野高校の生徒は、秘密主義というイメージがあるけれど。

小山

仲がいい友だちとの間では、お互いの成績も志望校も知っていましたね。友だちの中には、自分よりもっとすごい人もいました。

3. 衝撃が走った今年の共通テスト

史上最高に難しい問題

鶴吉

そして1月の共通テスト本番が……。

小山

焦りました。数学もヤバかったんですけど、国語がそれまでの模試と比べてもけっこう悪くて、8割取れなかったですね。

鶴吉

今回の共通テストは、史上最高に難しかった。数ⅠAの平均点が37.9点(100点満点)で、去年より20点も下がっているんですよ。

小山

出題文がめちゃくちゃ長い上に分かりにくかったです。

鶴吉

数学は、東京大学の文系レベル以上に難しかったんじゃないかな。センター試験時代までさかのぼっても、一番平均点が低かったですから。国の方針で、自分で必要な情報を取り出して解決できる「思考力」を問う方向に変わってきているんですね。これまでもその傾向は強まっていましたが、今年は顕著でした。

小山

学校でも共通テスト対策の教材をやっていたんですが、それがまったく役に立たなくて。

鶴吉

会場で泣いている人がいたとか、問題文をビリビリに破いている人もいたと聞いています。

小山

学校の授業では追いつかないレベルでした。東北大は共通テストの傾斜配点*があって、どう傾斜配点されるかを調べたら、数学と国語は傾斜配点されるけれど、社会などはそのままだったんですね。今回、日本史と世界史ではいい点数が取れていたので、それで何とかなりました。

*共通テストの配点は、国語と外国語が200点満点、数ⅠA、数ⅡB、理科基礎、理科、社会が100点満点となっている(受験する大学や学部によって変わる場合がある)。大学や学部によっては、この配点に傾斜をつけることがあり、それを傾斜配点と呼ぶ。傾斜をつけることで、科目の重要性が変わってくる。たとえば、理系学部では数学と理科の配点を上げて国語と社会を下げ、国際系の学部では英語の配点を高くするというように傾斜をつけ、重視したい能力を持った受験生が合格できるように調整している。苦手科目の配点が高いとロスが大きくなるので、傾斜配点は事前に調べておくのが望ましい。

出典:https://passnavi.evidus.com/article/trend/202105_02/08/

鶴吉

特に割を食ったのは医学部組ですよ。数学ができないと医学部は絶対受からないですし、条件はみんな一緒なので。

小山

うちの高校でも、トップの人は数学で9割取っていて、理系は7~8割取っています。文系の人にとって、特にしんどかったですね。

二次対策は全体の底上げを

鶴吉

そして、二次試験のために緻密な作戦を立てました。

小山

共通テストの配点と、合格最低点と照らし合わせてどれくらい点数が必要かを調べて、二次試験の3教科それぞれの目標点数を考えました。

鶴吉

二次対策も大変だったね。40日間が長く感じられたなぁ。

小山

長かったですね。やることも多かったし、ここから合格ラインまでどう持っていくか、時間との闘いでした。東北大の二次試験の過去問はすでに9月から手を着けていたんですが、始めた頃はぜんぜん解けなかったんですよね。

鶴吉

ボロボロだったよね。大学受験の世界では、学力の土台が完成していたとしても、二次試験の過去問は、最初は3割取れれば上出来なんですよ。5割取れたら志望校をワンランク上げてもいいくらい。

小山

単元別にいろんな大学の問題を解いたり、全体的な学力を上げていくための勉強をしたりしていました。

鶴吉

生きるか死ぬかみたいな悲壮感があったよね。

小山

併願する私立の対策も並行してやっていましたしね。過去問を2~3年分かな。同志社は手ごたえがあったんですけど、1~2問の差で不合格でした。大学によって出題傾向は違うので、レベル的にはあまり変わらなくても点数が取れない、というのを実感しました。

4. 二次試験対策でもうひと山

ひたすら東北大の合格を祈る日々

鶴吉

2月25日に東北大学の二次試験を迎えました。

小山

正直、英語は微妙でした。国語は意外と手ごたえあって、数学はそこそこ行けたかな。総合するとトントンくらいでしょうか。自己採点は怖くて合格発表までできませんでした。前期が不合格で後期試験を受けることになっていたら、ヤバかったです。京都府立大学に出願していたんですが、京都府立大の後期試験は、日本史と世界史の長めの論述問題だったんですよ。

鶴吉

京都府立大、大阪公立大はけっこう難関なんですよ。関西は京都大学、大阪大学があるからあまり目立ちませんが。私の中では東北大、阪大と遜色ないレベルです。加えて後期試験となると、難易度はさらに上がります。

小山

前期試験から後期試験までは約2週間しかなかったので、試験対策はしつつも心ここにあらずで……。「頼むから東北大、受かってくれ」とひたすら祈っていましたね。

鶴吉

小山くんに渡すために京都府立大の過去問をコピーしたんですが、問題を見て驚きました。

小山

与えられた単語を全部使って、けっこうな分量の論述文を作らないといけないんです。

鶴吉

内容が完全に入っていないと書けないですね。

小山

過去問は2~3年分やりました。

鶴吉

この時期、ずーっと教科書を読んでいた小山くんの姿を覚えています。

小山

教科書の内容がきちんと頭に入っていれば、答えが作れなくはない感じだったので。共通テストが終わってからは東北大の二次対策として国・数・英しかやっていなかったので、日本史と世界史にまったく触れていなかったんです。詰め込んだものがどんどん抜け落ちている状態でした。世界史も日本史も、とりあえず教科書を何度も読んで問題を解くことを繰り返していました。

鶴吉

そして、3月10日が運命の合格発表。僕は受験番号を聞いていなかったんですよ。

小山

すみません、伝えるのを忘れていました。兄は僕と同じタイミングで結果を見ていたようで、電話しようと思った矢先に向こうから電話がかかってきました。意外にもすごく喜んでいましたね。兄は7歳上で兄弟仲はそんなにいい感じでもなかったんですけど、兄が大学に行って社会人になる頃からとても優しくなって。入試の前はちょくちょくLINEしてくれていました。

鶴吉

お母さんも喜んでいたでしょう。

小山

めちゃくちゃ喜んでいましたね。

大学生活の醍醐味は「出会い」

小山

仙台には4月頭に引っ越します。

鶴吉

いよいよひとり暮らしですね。仙台での生活に慣れたら、お母さんに来てもらってうまい牛タンをご馳走できますね。お母さんも楽しみなんじゃないですか? 京大の大学院に進学したら、京都観光で親孝行もできるなぁ(笑)。

小山

(笑)。大学は、とりあえず単位を落とさないのが目標ですね。あとはサークルにも入りたいです。調べたらけっこういろいろあって、Twitterで軟式野球チームの方からDMをいただいたりして。

鶴吉

大学生活の醍醐味は「人」と「出会い」じゃないですか。まだまだコロナ下ではありますが、リアルで豊かな交流ができるといいですよね。大学は、日本全国からいろんな人が来ますから。

「私、どんな印象でした?」

鶴吉

ところで私、どんな印象でした? いや、小山くんは手がかからない生徒さんで、心配することもなかったし、必要以上に話すことがなかったので、ちょっと気になりまして。

小山

僕はひとりで黙々とやるのが好きなタイプなので、何を考えているか分かりにくかったかもしれませんね。鶴吉先生のことはずっと、「明るいなー、元気だなー」と思っていました(笑)。

鶴吉

私から明るさと元気を取っちゃうと何も残らない(笑)。イラッとしなかった?

小山

イラッとすることはなかったですよ。自分はもともと、基本的にテンションが一定なので。

鶴吉

生徒さんが来ると「おお!よく来たねー!」とつい言っちゃうし、生徒さんが勉強して疲れて帰るタイミングで「おつかれーっ!」と声をかけちゃうんです。妻や娘からは「うざい」と言われています(笑)。小山くんとは温度差があるような気がしていたので、最後聞いてみたかったんです。

小山

そうなんですね(笑)。

鶴吉

それはともかく、志望校に合格して本当によかったです。大学でもいい出会いに恵まれることを祈っています!

 

(取材・文/くりもときょうこ)