こんにちは!
まつがくでは生徒の皆さんに最適な学習指導を行うために常に最新情報を取り入れています。
今回は長野県教育委員会にて「今後の英語教育について」お伺いしてきましたので、その内容をご報告します。
日にち:2019年11月29日(金)
お話をしてくださった方:
長野県教育委員会 学びの改革支援課
高校教育指導係 指導主事 中村邦彦様
義務教育指導係 指導主事 小岩井高徳様
インタビュアー:松本・鶴吉
【今後の英語教育について】
Q:中学校、高校の英語の授業はこれからどのような点が変わっていくのでしょうか。
A:文部科学省の「高等学校学習指導要領外国語」の冒頭には3つの「目標」があり、そのすべてに「コミュニケーション」という言葉があります。
国の方針として大切にしている英語学習のキーワードは「コミュニケーション」なのだということです。
また私たちが磨いていくスキルとして英語には「聞くこと」「読むこと」「話すこと(発表)」「話すこと(やり取り)」「書くこと」の五つの領域があり、これらをバランス良く習得することが求められています。
中でもコミュニケーション力を向上させるための「話すこと(発表)」「話すこと(やり取り)」「書くこと」を育成する活動が重視されます。
これからは生徒の発信力を強化するための言語指導を充実することがより重要になり、ディスカッション、プレゼンテーションやエッセイなど、友達と話し合ったり、自分の意見を述べたり、自分の考えを書いたりする機会が増えていくと思います。
Q:英語教育の中で現在力を入れている「話すこと」の領域について、どのようにお考えでしょうか。
A:文部科学省の「全国学力・学習状況調査」によると、「授業で英語を用いた言語活動を行っている学校の生徒ほど英語の正答率が高い」という結果が出ています。
コミュニケーションには発信(話すこと・書くこと)と受信(読むこと・聞くこと)がありますが、「言語活動を積極的に行っている生徒は英語力が伸びている」ということです。
また同じ調査の結果から、「言語活動を行っている学校の生徒ほど、英語が好きと回答している割合が高い」という点も大変興味深いことです。
いずれも「学んだことを使ってみる」のが大切であるということを示しています。
英語が苦手だと感じる生徒も、ぜひ間違いを恐れずALTの先生や英語の先生と話してみてください。
きっと英語が楽しくなってくるはずです。
Q:中学校や高校では「話すこと」「書くこと」などの発信系の技能についての評価はどのようになっていますか。
A:「話すこと」や「書くこと」を評価する方法として「パフォーマンステスト」が行われています。
平成30年度の調査によると、県内全中学校のうち約80%が何らかの形で「パフォーマンステスト」を実施しています。
高校での実施率はまだ低いですが、新学習指導要領の全面実施に向け、こうした「パフォーマンステスト」を行うことが必要になります。
いずれにしても、主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、実際のコミュニケーションで活用できる技能を育成するために、このパフォーマンステストはとても有効です。
今後も授業における「話すこと」や「書くこと」の充実につながるよう、私たちも支援していきたいと考えています。
Q:「スピーキングの評価」について、試験官ごとに評価基準があいまいになる可能性があり、公平性を保つのが難しいのではないか、という声を聞きます。そうした不安についていかがお考えですか。
A:パフォーマンステストを評価する際には、一般的に評価基準を示す「ルーブリック」を用います。
ルーブリックにはテストの成果の判定基準が書いてあります。
例えば、スピーキングのルーブリックには
①発音や音声がどの程度明確であるか
②様々な表現を効果的に使用できているか
③話の内容は詳細について具体例を用いて説明できているか
④説得力のある結論が主張できているか
などがあり、多くの英語資格・検定試験でも利用されています。
試験官が事前にこのルーブリックを共有し、その上で評価を行いますので、公平性は確保されます。
また、ルーブリックは「●●ができる」「◆◆ができる」という書き方をしています。
テストでうまくいかないとがっかりすることがありますが、ルーブリックには、先生と生徒との「活動の振り返りをする」という大きな目的もあります。
「●●ができない」という評価よりも「こうしたらもっとできるようなる」という、将来的に希望の持てる評価として利用するのが「ルーブリック」の目的でもあります。
学校でスピーキングテストをする機会があれば、みなさんが持っている力を精一杯使って取り組んでほしいと思いますし、そうした経験を積んでいくうちに確実にみなさんの英語の力がついていくと思います。
Q:学校のテストの形式も変わるのでしょうか?
A:変わる方向に向かっていると思います。
「生きて働く知識・技能」が重要になります。
例えば
People go to ( ) when they want to borrow books. You can read books. You can read books or study there.(出典:全国学力・学習状況調査)
という問題に対し、選択肢から「library」を選ぶことができるような、情報を正確に読み取る力がこれからは求められていくと思います。
また、習ったことがきちんと知識として残っているかということも、これまでと同様にテストで問われますが、もう一つの大切な要素として、自分の考えを述べたり、気持ちを伝えたりするような思考力・判断力・表現力が問われる設問が今後は増えてくるでしょう。
いずれにしても、みなさんのコミュニケーション力を伸ばすことを目的としたテスト形式になっていくことが予想されます。
【その他】
Q:ICT(※1)を活用した教育について、現状と今後の予定を教えてください。
A:電子黒板につきましては高校への設置が全て完了しました。
中学校は市町村単位での対応になります。
実際の使用例としては、飯田市遠山中でフィリピンとスカイプで繋ぎ、オンライン英会話の授業をしていると聞いています。デジタル教科書の導入は各校の判断に委ねていますが、現時点で導入予定があるという話は聞いていません。
※1:「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションの事。教育現場ではPCやタブレットの教材、電子黒板など。
Q:タブレットなどのデジタル教材を教育現場へ導入するにあたり、障害となっているものは何でしょうか。
A:最大の問題は予算ですね。
特に義務教育については市町村単位での判断になりますので、財政状況によって状況が異なってきます。
Q:中学校の授業はどのように変わっていくのでしょうか。
A:これまでは先生→生徒という一方通行の授業でしたが、これからは生徒参加型になります。音楽や体育の授業をイメージしていただければわかりやすいですね。数人のグループに分かれ、テーマに沿って生徒同士で話をしたり発表しあったりするような形になると思います。
Q:長野県の中学校の夏休みが長くなるというのは本当でしょうか。
A:長野県全体としては夏休みを伸ばす方針ですが、関東圏のように8月一杯夏休みになるようなことはないと思います。
年間の休日数は変わりませんので、夏休みが伸びればその分冬休みや春休みが短くなります。長野県は元々春休みが長いのですが、夏休みを伸ばした分春休みを短くしている地域もあります。
【まとめ】
英語の成績アップのためには4技能、特に「発信が大切」という話はとても重要だと思いました。
学習塾ではどうしても「読む・書く」に重心が置かれがちですが、今後「発信」が成績アップのキーポイントとなり、また学校もそちらに舵を切っていくとなれば、それに対して私たち学習塾は何をするべきなのか、と考えさせられました。
中村様、小岩井様、お忙しい中ありがとうございました!
長野県教育委員会 学びの改革支援課公式ページ
https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/kyogaku/goannai/soshiki/kyogaku.html
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